2015年10月29日木曜日

異国で浮遊する心 / 『ロスト・イン・トランスレーション』




私が最も好きな映画は、

ソフィア・コッポラ監督の『ロスト・イン・トランスレーション』です。


カメラマンの夫について東京に来た主人公のシャーロット(スカーレット・ヨハンソン)

まだ新婚だというのにすでに結婚生活に不安を抱いてしまい、

なんとなく将来に希望を見出せない状態。

夫が仕事をしているあいだ、

もやもやした気持ちと共に 異国の街《トウキョウ》をさまよっていた。

ある夜、彼女は、同じく将来に希望を見出せない中年の俳優ボブ・ハリス(ビル・マーレイ)

とホテルのバーで知り合う。

シャーロットとボブは、シャーロットの日本の友人たちと共に東京の夜で遊び、

お互いに抱えるむなしさを共有し、友情を深めていく...


というお話。


この映画の魅力はいくつもあるのですが、

中でもとくに、シャーロットとボブの存在の不確かさに惹かれます。


いつまでも気持ちが晴れない2人は、着地点がわからずに浮遊しているように見えます。

2人がもともと抱えている満たされない気持ちに、

言葉がわからない異国の地にいるという不安感が加わって

満たされない気持ちをさらに強く感じるようになってしまい、

もうどこに行けばいいのかわからないよ... という感じです。


「あ〜、不安だよね。わかるわかる」って、観るたびに思います。


2人が抱えている、どこに着地すればいいのかわからない浮遊した気持ちって、

誰もが持っているものだと思います。

みんな、自分の価値観で一番大切にするものを決めたり、

物事に優先順位をつけることで、自分なりにひとまずの心のあり方を

決めているけれども、心のあり方が決められないと、

私たちの心はふわふわと浮遊し続けるのではないかと思います。


異国の文化に触れて価値観が揺さぶられた二人の心は、

どこに行けばいいのかわからなくなってしまって、

ロスト(迷子)してしまうわけですが、

観ている私たちが不安にならないのは、

シャーロットとボブが、寄り添いながら迷子になっているから。


「人の居場所なんて、誰かの胸のなかにしかない」

という言葉が、これまた私が大好きな小説であり映画にもなっている

『冷静と情熱のあいだ』にでてきます。


東京で過ごす時間のなかで、シャーロットとボブはお互いに、

相手の胸の中を自分の居場所にしていたのではないでしょうか。

それはもう、友情ではなく恋愛だったと思います。

ラブストーリーだったから、ラストシーンがあんなにも切なく感じるのだと思います。


それぞれの生活に戻ったあとも、東京での冒険を思い出すたびに

2人の心はお互いの胸の中に飛んで行くのでしょう。


『ロスト・イン・トランスレーション』観ていないかたは、ぜひ。



早稲田松竹での上映を観に行きました。
同時上映作品だった『her / 世界でひとつの彼女』は、ソフィア・コッポラの旦那さんである
スパイク・ジョーンズ監督の作品です。こちらも良かった、泣きました。


旅の適齢期について / 沢木耕太郎さん『旅する力』






沢木耕太郎さんの『旅する力』というエッセイを読んでいたら、「旅の適齢期は26歳だ」という話がでてきました。

旅をするのに必要な経験と未経験を良いバランスで併せ持っている年齢が26歳くらいだそう..

それを読んで、その通りだ!と思いました。


旅の醍醐味は新しいことに遭遇して感動すること。

純粋に感動するには、知らないこと、未経験のことがなくてはいけない。

でも、若ければいいというわけでもない。感動するには十分に育った感受性が必要だから。

今のうちにたっぷり冒険して感性を育てておけば、

これから先の人生を心豊かに生きることができると思う。


20代、私と同世代のみなさんが色んなところに行けばいいなあと思ってます。

(写真はうちの猫です)

2015年5月16日土曜日

人生は円のようなものである / 香川県直島



' Life is like a circle '
A woman who is cafe owner said to me so.
What she said made my mind clear.



数年前の夏、まだ学生だった頃。

「あ、旅行しよう」と思い立って香川県の直島に行きました。

一泊二日の一人旅でした。

フェリーに揺られて海を渡り、

港にポツンと置かれたあの有名なカボチャの前で立ち止まって、

汗を拭きながらいくつかの美術館を巡り、

偶然仲良くなった、同じく一人旅で来ていた女の子と夜の海岸を散歩をして

「お互いこれから色々がんばろうね」と言って別れ、

民家を改装したカフェの窓際の席で、海を見ながらぼうっとして、

それから、ものすごく慌ててあの銭湯に入って(入浴時間2分程度!)

濡れた髪のまま帰りのフェリーに飛び乗って、帰った。

ざっくりざっくりまとめるとこんな感じの旅行でした。





帰りのフェリーのデッキから見た、

泡立つ海と小さくなっていく島の光景は今でもはっきり覚えています。


それと、カフェの女性オーナーの言葉!これもとてもよく覚えています。


「人生はぐるーっとつながっている円のようなもの。

右に行ったり左に行ったりしても、結局、最後にはスタートに戻ってくる」


なぜ、彼女がこの言葉を私に言ったのか今はもう忘れてしまいました。

たぶん、将来のことで迷っていた私が進路相談のようなことをしたのだろうと思います・・・


都会の雰囲気に疲れて、大阪のカフェを辞めて島に来たオーナー。

きっと、今の私と同じ位の年だったんじゃないかなあ



ともかく

オーナーの言葉を聞いたとき、

「そうか、あれこれ悩んでもスタートに戻ってくるのか。

じゃあ、最初に目指していた夢を追いかけるしかないな」

とその時抱えていたもやもやがすんなり解決しました。

「人生は円」説は、今でも時々、私の心を支えています。







旅行に限らず昔のことを思い出すとき、

大抵の出来事は淡くぼやけたフィルターがかかったような映像でみえてきます。

きっと時間が経てば経つほど、思い出はぼやけていってしまう。

でも、周りがぼやけていくからこそ、

本当に自分にとって大切だった瞬間が鮮やかに思い出されるようになる。

何年経ってもぼやけずに、ふとした瞬間に鮮やかに思い出されること。

それに出会いたくて、旅行に行きたくなるんだと思います。







△ちなみに「あの有名なカボチャ」とは草間彌生さんの作品。

「あの銭湯」とは、大竹伸朗さんの『I Love 湯』のことです。

銭湯、今度いったときはゆっくり入りたいです。





直島観光情報 : http://www.naoshima.net/
ベネッセアートサイト直島 : http://www.benesse-artsite.jp/