2014年11月3日月曜日

自分を繰り返さない -ミシェル・ゴンドリー-


私にとって、ミシェル・ゴンドリー監督といえば「恋愛睡眠のすすめ」。

どんなストーリーだったかは忘れてしまったのだけれど

手作り感溢れるセットと夢か現実かわからないような独特な世界観に

衝撃を受けたことを覚えています。







「恋愛睡眠のすすめ」(2006/仏)
「ラン・ローラ・ラン」に並んで衝撃的でした。
こんな映画ありなんだ、と。






ミシェル・ゴンドリー監督が来日して日本の映画監督たちと

トークセッションを開催するということで、

アートを専攻した友達と映画会社で働く友達と共に、

会場の東京都現代美術館に行きました。


トークセッションの入場券は先着順で配られるということだったので、

念のために開館前に美術館に着くようにしたのですが

私たちが着いた頃にはすでに入場券配布を待つ人たちの列が。

さすがミシェル・ゴンドリー。注目度高い。

彼の独創的な作品はやはりアートな人たちに人気があるようで、

並んでいるのはアート・デザイン関係らしき人たちが多かったように感じます。



登壇者はミシェル・ゴンドリー監督と「かもめ食堂」の荻上直子監督、

「人のセックスを笑うな」の井口奈己監督、デザイナーの大島依提亜さん

作品制作への取り組み方やグループワークを進める上で気にかけていることなど、

みなさんそれぞれの考えをお話されていました。


トークの中でもっとも印象的だったのが、

ゴンドリー監督の「自分を繰り返してはいけない」という言葉。







"初めて映画を作る人たちは、自分が人と分かち合いたいと思っていることを

めての作品で出し切る。

そしてそれが成功すると、同じ成功をおさめるために

同じことをしなくてはいけないと思ってしまう。

映画は常に実験的であり続けなくてはならない。

一作目を作った後はキャンバスを真っ白にして、挑戦しなくてはならない。

決して自分を繰り返してはいけない"





実験的な作品をつくるということはリスクが伴うこと。

ましてやゴンドリー監督ほどの大物になれば

一つ映画を作るのにも大プロジェクトになるわけだから、

そのプロジェクトの中で挑戦をして、

もし失敗したらそれまでのキャリアが壊れてしまう可能性もあるはずです。

(実際、映画のスポンサーから実験的な試みは控えるようにと

言われたこともあったようです)


リスクを背負う勇気があるからこそ、ゴンドリー監督は

いつも斬新な作品を世に送り出す新鮮な存在であり続けられるのでしょう。

「今まで築きあげたものを守るよりも、すべてを失う覚悟で新しいものを作りたい」

そう思える心の強い人だけが、

革新的な作品をつくりだすアーティストになれるのだと実感しました。


「毎回スタイルを変えて挑戦し続けているアーティスト」と

ゴンドリー監督が褒めていたのがビョーク。

監督はビョークのPVを数多く手掛けています。

確かにビョークのアーティスティックな音楽とゴンドリー監督の世界観は

良い化学反応を起こしています。








「新しいものとは何か」という質問にゴンドリー監督は

"落ちる直前のポイント・バランスが壊れる寸前のポイントが新しいもの

と答えていました。


いわゆる「整っていると判断されるスタイル」を壊して

(もしくは新しいものを付け加えていって)

鑑賞者に不快感を与えないギリギリのところでその作業を止める。

そうすれば作品は「新しいもの」として評価される...というかなと解釈しました。


それは、ゴンドリー監督は鑑賞者が何を良いと感じ、

何を悪いと感じるかを理解した上で作品を作っているということ。

バランス感覚の良い人なんだろうと思います。



ストーリーを忘れてしまっている「恋愛睡眠のすすめ」と、

最新作の「ムード・インディゴ」を早く観たいです。



Michel Gondry:http://www.michelgondry.com/
東京都現代美術館:http://www.mot-art-museum.jp/